研究概要 |
粘表皮癌は唾液腺悪性腫瘍の中でもっとも頻度の高い腫瘍である。申請者のグループはこれまで、新規遺伝子異常CRTC1-MAML2キメラ遺伝子およびCRTC3-MAML2キメラ遺伝子がこの腫瘍に特異的であり、予後良好と関連する重要な分子生物学的マーカーであることを世界に先駆けて報告した。キメラ遺伝子による腫瘍発生機序としてcAMP response-element binding proteinシグナル経路を異常化することが想定されているが、その詳細は明らかではない。申請者のグループはCRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子による腫瘍発生機序、想定されるその他の遺伝子異常、現在用いられている分子標的治療剤の応用の可能性を明らかにするために以下の研究を中心に行っている:1,他のMAML2関連遺伝子異常のスクリーニングおよび同定、2,粘表皮癌の疾患分類におけるCRTC1/3-MAML2キメラ遺伝子の意義の検討,3,CRTC1-MAML2、CRTC3-MAML2キメラ遺伝子導入およびサイレンシングによる遺伝子発現プロファイル変化と表現型変化を明らかにする:申請者のグループは22年度に、以下のことを明らかにした:CRTC1/3-MAML2キメラ遺伝子陽性粘表皮癌が陰性の粘表皮癌に比べて明らかに異なる分子病理学的性質を有し、予後良好群を形成することから、独立した疾患単位と考えられること。また分子病理学的手法を用いたキメラ遺伝子発現検索と既存のWHO分類を併用することで、より正確な予後推定が可能であること、などを明らかにした。本年度の計画としては、想定されるその他の遺伝子異常をbreak-apart FISH法検索や5'RACE法を用いて検索・同定する。そしてこれまで得られた結果を論文としてまとめ、投稿する予定である。
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