研究概要 |
1.RAS-MAPK経路の抑制によりfascin発現が低下するかどうかの検証 正常膵管上皮に比しfascinの発現が亢進していた2種の膵癌細胞株,PCI-35及びMIAPa-Ca-2において,RAS-MAPK経路の抑制剤UO126処理を行いfascin mRNAの定量を行った.いずれの細胞株においても,コントロール群に比し有意にfascinの転写が抑制されていた. 2.RAS-MAPK経路の活性化によりfascin発現が惹起されるかどうかの検証 RASの変異がない対照細胞株HEK293に対し,MAPKK遺伝子をtransfectionしRAS-MAPK経路を活性化させた.さらには,MAPKの主要なエフェクター分子であるERKを非活化させるDUSP遺伝子を導入し,fascin発現の動向を検証した.RAS-MAPK経路のシグナル亢進,あるいは抑制を起こしても,HEK293ではfascin mRNAの発現の増減はほとんど認められなかった. 以上.膵癌細胞株においては当初の仮説通りに,RAS-MAPK経路とfascinの転写の間に関連性があることが示唆されたが,対象株のHEK293では再現性は認められなかった.Fascinの転写に関し,RAS-MAPK経路以外にもなんらかの調性系が存在し,HEK293においてはその系の負のシグナルによりfascinの発現が抑えられたが,膵癌細胞株においてはその抑制経路にも破綻を来たしている可能性が示唆された.
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