研究概要 |
前年度の解析結果により,正常膵管上皮に比しfascinの発現が亢進していた2種の膵癌細胞株,PCI-35及びMIAPaCa-2において,U0126処理を行いRAS-MAPK経路を抑制するとfascinの転写が有意に抑制されることが判明したため,引き続いてfascin遺伝子のpromoter活性がRAS-MAPK経路のon-offにより変動するかどうかの解析を行った. Fascinのpromoter領域のcloningを行い,これをルシフェラーゼが導入されたレポーターベクター(pGL3)に挿入した.同ベクターを上記の2種の膵癌細胞株に導入してルシフェラーゼ発光の有無を調べた.さらにU0126処理によりMAPK経路を抑制し,fascin promoterが非活性化されるかどうかを検証した. Fascinのpromoterを挿入したレポーターベクター(pGL3)を,PCI-35及びMIAPaCa-2の2種の膵癌細胞株に導入すると,ルシフェラーゼアッセイではいずれの株においてもpromoterの活性化が認められた.さらにU0126処理によりRAS-MAPK経路を抑制したところ,MIAPaCa-2においては24時間後,48時間fascin promoterの非活性化が観察された. 多くの癌腫においてfascinの異常発現が報告されているが,その機序については一部の癌を除いて不明僚であった.今回の研究において,少なくとも膵癌においては,fascinの異常発現はKRAS遺伝子変異に基づくRAS-MAPK経路の恒常的活性化に基づくことが示されたと考えられる,
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