本研究では、乳癌におけるHER2遺伝子発現の多様性とポリソミー17の関連性を解明することを目的としている。今年度は症例を選出し、HER2の免疫組織化学染色及びDual color In Situ Hybridization (Dual ISH)法による検討を行った。対象は2004-2007年間に当院で手術にて摘出された原発性乳癌のうち19例とした。HE標本にて浸潤部と乳管内病変を含む主病巣の切片を選出した。組織型の内訳は浸潤性乳管癌17例、粘液癌2例。HER2の免疫染色や遺伝子増幅について通常は癌の浸潤部で判定するが、今回は浸潤部と非浸潤部(乳管内病変)で各々判定した。浸潤部でHER2遺伝子増幅ありの症例は5例あり、うちポリソミー3例、ダイソミー2例であった。浸潤部でequivocalは2例でともにポリソミーであった。また乳管内病変がHER2遺伝子増幅なしの症例のうち、3例では浸潤部でHER2遺伝子増幅が認められ、ポリソミーであった。乳管内病変がポリソミーで浸潤部がダイソミーである症例は2例であったが、ともにHER2遺伝子増幅は認めなかった。このようにDual ISH法は、明視野観察下で組織形態ごとのHER2遺伝子増幅やポリソミー17の有無の判定が可能であった。HER2遺伝子発現とポリソミー17の関連性を直接的に明らかにするような結果は得られなかったが、次年度は症例数を増やしてさらに検討を進める。
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