研究概要 |
1.漿膜弾性板を越えた腫瘍微小環境の特徴に関する検討 漿膜弾性板を越えた腫瘍部の組織学的特徴を検討する目的で、腫瘍の異なる場所(a:腫瘍の中心部、b:粘膜下層の浸潤先進部、c:漿膜弾性板浸潤部、d:漿膜弾性板非浸潤腫瘍先進部)から組織を採取するfour point tissue microarrayを大腸癌300症例で作成した。 2.漿膜由来線維芽細胞(SPF)の特徴 2-1.SPFの採取 大腸から漿膜由来線維芽細胞の初代培養を行った(SPF)。比較対象として粘膜下層由来線維芽細胞の培養も行った(SMF)。両者ともDMEMで長期培養可能であること。細胞増殖はSMFがSPFより早いことを確認した。SPF,SMFともに紡錘形で、免疫染色でSMA(-),S-100(-),CD31(-),Vimentin(+),Calretinin(-)、FlowcytemetryではCD3(-),CD14(-),CD20(-),CD34(-),CD105(+),CD68(-),CD45(-)であり、線維芽細胞として矛盾がなかった。 2-2.SPFの癌細胞増殖と転移に及ぼす影響 SPF,SMFを大腸癌細胞株とマウスに共移植し、腫瘍の増殖及び転移能を検討した。SPFを共移植した腫瘍はSMFを共移植した腫瘍と比較して腫瘍の増殖が速くリンパ節転移が多くみられた。 2-3.定常状態及び癌細胞培養上清添加時のSPFのmRNA変化 定常状態及び癌培養上清を添加した際のSPF,SMFにおけるmRNA発現の比較検討を、まずサイトカインで行った。IL-6は定常状態からSPFにおいてSMFより発現が高く、癌培養上清を添加しても変化に乏しかった。IL-1 betaは定常状態ではSPFとSMFに発現の差を認めないが、癌培養上清添加時にSPF特異的に発現上昇がみられた。
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