近年、動脈硬化病変の進行において、T細胞をはじめとする免疫系細胞の重要性が報告されている。我々は、今までに、T細胞活性化分子であるOX40とそのリガンドであるOX40Ligand(OX40L)とのシステム(OX40/OX40L系)の抑制により、マウス動脈硬化病変の進行の抑制が可能であることを示してきた。そこで、本研究では、OX40/OX40L系の抑制による動脈硬化減少の機序に関し、基礎的検討を行う。OX40/OX40L系と動脈硬化病変の進展に関する詳細な機序が明らかになれば、本システムの臨床応用への発展性が明らかになり、新規治療法の開発につながるものと考えられる。これらの背景、目的を踏まえ、平成22年度は以下の内容を実施した。 ApoE遺伝子欠損マウスに比して、ApoE/OX40L遺伝子ダブル欠損マウスでは、大動脈における動脈硬化病変の減少が認められたため、大動脈弁部位での心臓の凍結切片を作成し、免疫染色を施行した。両群間で、マクロファージ、平滑筋細胞など、動脈硬化病変構成細胞には有意な差を認めなかったが、血管外膜の新生血管数を測定したところ、ApoE/OX40L遺伝子ダブル欠損マウスはApoE遺伝子欠損マウスに比して、有意に血管数が減少していた。血管新生におけるOX40/OX40Lの役割を詳細に検討するため、野生型マウス、OX40L欠損マウスの皮下に血管新生を観察するゲルであるマトリゲルを埋め込み、新生血管数を測定したところ、OX40L遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比し、有意に新生血管が減少していた。 本実験結果から、OX40/OX40L系の抑制により動脈硬化病変の減少が認められ、その機序として動脈硬化病変における血管新生の抑制が関与している可能性が示唆された。本現象は全く新しい動脈硬化治療戦略となり得る可能性かあり、臨床的にも重要な意義があるものと考える。
|