研究概要 |
視神経脊髄炎(neuromyelitis optica,NMO)の病態解明及び新規治療の開発の礎とするため、AQP4蛋白能動免疫によるNMOモデルマウスを作成し、NMOの病態解明に迫ることを目的に研究を行った。rat-AQP4全長蛋白をExperimental Allergic Encephalomyelitisを誘導する方法と同様な方法でマウスに免疫すると、血中抗AQP4抗体価は免疫後1週から徐々に上昇し、約8週まで高値を示したが、神経症状は呈さず、病理学的にも中枢神経内に明らかな炎症性病変、脱髄性病変は認めなかった。これは、血液脳関門(blood-brain barrier,BBB)の存在のため、中枢神経内に抗体が到達しないためと考えた。そこで、BBBの脆弱化モデルマウスを作成し、AQP4蛋白を免疫することとした。BBBが脆弱である生後3週以内の仔マウスへAQP4蛋白の投与を行ったが、神経症状は出現せず、抗AQP4抗体の上昇も認めなかった。この結果は仔マウスの免疫機能が未成熟なためと考えられたため、次に抗AQP4抗体が高値である患者血清を、仔マウス腹腔内に直接投与した。血中抗AQP4抗体価は患者血清投与後2週間までは有意に上昇していたが、やはり神経症状の出現はなかった。病理学的検索では脳室周囲に炎症細胞浸潤を認め、抗AQP4抗体が中枢神経の炎症に関与する可能性があることを一部示すことができた。さらに免疫機能が成熟した12週齢程度のマウスにおいて、BBBを脆弱化させるため、Complete Freund's adjuvant及びPertussis toxin(PT)投与(3-5日連続投与)によるBBB脆弱化を行った。PT投与終了後day3に染色液を腹腔注射したところ、軽度ではあったが、脳が染色された。このマウスにIL-6高値、及び抗AQP4抗体が高値である患者血清を腹腔注したが、神経症状の出現は認めなかった。 これまで抗AQP4抗体の病原性を示唆する結果を得ており、今後BBBの破綻方法を検討し、NMOのモデルマウスを作成すべく、研究を継続している。
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