Triggering receptor expressed on myeloid cells (Trem)ファミリーは、細胞外領域にイムノグロブリン様ドメインと短い細胞質内領域を持つ分子群で、その多くは会合しているDAPI2を介してシグナル伝達を行う。このファミリーの一つであるTrem-like 4 (Treml4)は、マウスCD8+樹状細胞(DC)や一部マクロファージに発現している。これまでに、可溶化Treml14が死細胞へ結合できることを見いだしてはいるが、生理的機能は不明である。そこで、CD8+DCの特徴でもある取り込んだ死細胞(アポトーシス細胞)由来抗原をMHC class I上に提示するクロスプレゼンテーションにTreml4が関与するかどうかTreml4遺伝子欠損マウスにて解析した。その結果、Treml4欠損マウスでも、野生型で認められる死細胞の取り込みや、死細胞由来抗原に特異的な細胞障害性CD8 T細胞の活性化が認められた。このことから、少なくともこの実験系ではTreml4が死細胞の取り込みとその抗原提示に関与していない、または、その機能が他の分子により代償されていることが示唆された。 さらに、抗Treml4抗体を産生するハイブリドーマより抗体遺伝子を同定し抗原と融合させたengineered抗体を作成した。これをマウスに投与して、Treml4発現細胞への抗原の運搬を検討したところ、抗体はTreml4発現細胞に効率よく輸送され免疫応答を誘導した。また、腫瘍抗原を付加してマウスに免疫して抗腫瘍免疫を検討した結果、免疫応答が効率よく誘導できていた。このように、抗Treml4抗体に抗原を付加することにより、DCに発現しているC-type lectin受容体に対する抗体を用いた場合と同様に、効率的に抗原を運搬でき、アジュバントと共に投与することにより免疫応答を誘導できることが明らかになった。
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