研究概要 |
1)MUTYHは8-ヒドロキシグアニン(8-OHG)に関連する塩基除去修復遺伝子のひとつであり、多発性大腸がん腺腫、大腸がんの原因遺伝子として知られている。我々は胃がんにおいてこのMUTYHの発現量が低下していることを見つけた。さらに、MUTYHの腫瘍部でのタンパク質レベルでの発現低下は組織型、pT因子と関連していること明らかにした。また、MUTYH低発現群は術後予後が不良であることが示された。次にMUTYH安定発現株を用いた実験により、この遺伝子の発現量の差がA:8-OHG塩基対に対する修復活性や細胞内における8-OHGの突然変異抑制効果に影響を与えていることを明らかにした(J Pathol,225:414-23,2011), 2)塩基除去修復酵素の新たな基質を検索するため、8種の組み換えタンパク質、OGG1、MUTYH、NTH1、NEIL1、SMUG1、UNG2、MPG、TDGを準備し、ヒト組織の中で検出された過酸化脂質DNA付加体を含むオリゴを用いて修復活性の検討を行った。その結果、これまで報告されていない新たな基質に対する修復活性が見つかったため、Tet-on systemを用いたドキシサイクリン発現誘導株を樹立し、ウエスタンブロットと免疫蛍光染色により目的のタンパク質が発現誘導されることを確かめた。現在、細胞内における過酸化脂質由来のDNA付加体に対する修復活性を調べるため、樹立した細胞株を用いてSupF forward mutation assayを行い、変異抑制の効果を調べている。また、この修復遺伝子の発現の違いによるDNAの付加体量を測定するため、付加体を誘発する試薬を加えて細胞を培養し、そのDNAをLC-MS/MSを用いて調べる予定である。
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