1)CDX2発現細胞の樹立:CDX2の細胞増殖及び生存抑制の機序を解析するために、マウス由来大腸癌細胞CMMT93やヒト由来大腸癌細胞DLD-1を用いて、CDX2発現を誘導できる安定細胞株を樹立した。これらの細胞でCDX2の発現を誘導すると、細胞数が減少することが分かった。これらは、CDX2が腸上皮細胞の生存を負に制御していることを示している。 2)CDX2複合体の解析:CDX2の細胞増殖及び生存抑制の機序を解析するために、DLD-1細胞でflag-CDX2の発現を誘導してCDX2複合体を抽出した。また、CDX2の転写能欠損変異体であるCDX2:R237Aを用いて、同様にfalg-CDX2:R237Aを発現して、falg-CDX2:R237A複合体を抽出した。これらの複合体に含まれる因子を、銀染色の後、質量分析により解析した。その結果、結合因子の一つにATG7を同定した。ATG7はオートファジーの必須酵素である。この結果は、CDX2がArG7との結合を介してオートファジーを制御している可能性を示唆している。また、CDX2とArG7の結合は、免疫沈降とウエスタンブロッティングによっても確認した。 3)CDX2によるオートファジーの制御の解析:CDX2がオートファジーの活性を制御するかを検討するために、オートファジーの活性のマーカーであるLC3Bのウエスタンブロッティングを行った。その結果、LC3B-PEが増加していることが分かった。この結果は、CDX2がオートファジーを促進している可能性を示唆している。 4)今後の解析:今後、CDX2によるATG7の制御機序の解明を目標とする。また大腸癌細胞の生存制御におけるオートファジーの役割を解析する。
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