急性心筋梗塞や脳梗塞の病態は粥状硬化、特に不安定な粥腫の破綻と深く関与しており、その組織像として血管新生と炎症細胞の集簇が挙げられる。新生血管は造血幹細胞の動員により形成されるとされているが、何がこれらの細胞を動員するかは不明である。炎症性サイトカインの1つであるオステオポンチン(OPN)はトロンビンで切断され新たな活性部位を持つtrOPNとなる。近年、trOPNが造血幹細胞の遊走と分化、niche形成に必要不可欠であることが報告されたが、粥腫におけるtrOPNの作用は不明であり、粥状動脈硬化巣における造血幹細胞の動員、血管新生、粥腫の成長に対する関与を明らかにするため本研究を立案した。 平成22年度において私は、以下のことを行った。 1.ヒト動脈硬化巣におけるtrOPNの局在を免疫組織学的に証明した。 trOPNは新生血管周囲のCD68陽性細胞と共存し、新生血管を伴わない部位でのCD68陽性細胞には認められないことを見いだした。このことは新生血管とtrOPNとの関係を示唆する所見である。さらに、粥腫のステント挿入などによる機械的な破壊によってtrOPNの血中濃度が上昇し、これがその後の脳虚血性病変の出現に関係があることを明らかにした(投稿中)。 2.ApoE・OPNダブルノックアウトマウスを樹立した。 trOPNが血管新生に関与しているかどうかを検証するために、内因性OPNを持たないマウスを使用する必要がある。 動脈硬化モデルマウスであるApoEノックアウトマウスにOPNノックアウトマウスとかけあわせたダブルノックアウトマウスを樹立した。23年度には本モデルマウスを用いたin vivo解析が可能となった。
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