研究概要 |
本研究の目的は、カロリー制限(CR)の抗老化機構をp53とFoxO1の相互作用という観点から解明することである。 (1)研究期間内にp53 (m/+)マウスの繁殖が困難であったため、FoxO1, FoxO3-ノックアウトマウスを用いた研究結果が主体となった。しかしながら、CRによって野生型マウス(WT)組織におけるp53の発現が抑制されること、p53によって制御されるCdkn2aの加齢変化が抑制されることを明らかにした。 (2)CRによるp21の発現上昇抑制:酸化ストレス後のp53, FoxO1のCR特異的動態を検討するために、酸化ストレスによるDNA傷害を引き起こすDoxorubicin (Dox)を投与後、経時的にp53, FoxO1により転写制御されるp21のmRNA発現レベルを検討した。まず、DNA障害のレベルを、H2AXをマーカーとして、その陽性細胞を計測した。Dox投与後の陽性細胞数にCR,FoxO1-(HT, +/–)マウス組織では有意な差はなかった。p21-mRNAレベルは、Dox投与により、対照の自由摂食(AL)マウス心臓組織において有意に発現が増加した。CRはその発現上昇を抑制したが、FoxO1-HTと野生型(WT)マウスによる差はなかった。 以上の結果は、心臓においては、酸化ストレス、DNA傷害に対するCRの効果にFoxO1の影響はほとんどないと考えられた。 (3)CRの疾患抵抗性におけるp53, FoxO1の役割:Parkinson病モデルを作成するために、3-nitropropionic acid (3-NPA)を投与した。CRラットを用いた予備実験を行い、CRの効果を確認したが、実験期間内にp53 (m/+), FoxO1-HT, FoxO3-HTマウスを用いた実験は終了しなかった。今後、実験を継続する予定である。
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