膠芽腫(Glioblastoma)は、極めて予後不良の悪性脳腫瘍であり、最もブレークスルーが待望されている難治性癌である。本研究は膠芽腫の悪性形質を左右する新たな機能遺伝子およびシグナル伝達を探索し、新規治療標的を見出すことを目的としている。これまで、IGFBP-2とCD24が、膠芽腫の悪性形質への関与していることを示してきたが、さらに、その機序と、そこに関わる新規機能遺伝子を探索しており、同定された遺伝子について、新たな治療標的となりうるか検討している。平成22年度は、レトロウイルスを用いた安定的ノックダウンの系を用いて、IGFBP-2とCD24をノックダウンした膠芽腫細胞を作成し、抗癌剤の存在下、非存在下で様々なバイオアッセイを行った。また、Forward genetics的アプローチとして、IGFBP-2を制御している未知の遺伝子を網羅的に探索するために、IGFBP-2のプロモーターとランダムアンチセンスライブラリーを用いたexpression cloning法を試み、得られた約30の新規機能遺伝子候補について、データベース検索を行うとともに、DKK1、RelA、TPM3、MALAT1、GHITM、C19orf2、について実際に、IGFBP-2発現変化に伴うmRNA、蛋白の発現変化を解析した。発現解析の方法が確立したもの、結果がマイクロアレイの通りだったもの、期待した結果が得られなかったものがあるが、現在、その結果を検証している。IGFBP-2との連動が強く疑われ、生物学的に意義が見出せそうな遺伝子について、解析を進めて行く予定である。
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