研究概要 |
上皮系臓器が機能を発揮するためには、細胞極性を獲得した上皮細胞がさらに立体的な組織構造を形成することが必要である。しかしながら、上皮細胞の成熟や組織構造形成を制御する分子メカニズムについては不明な点が多い。本研究では、肝前駆細胞株HPPLが上皮細胞として分化・成熟し、組織構造を形成する過程を3次元培養系を用いてin vitroで再現し、その過程を制御するメカニズムを解析した。 まず、肝前駆細胞が胆管上皮細胞へ分化する過程で発現上昇する遺伝子とて転写因子Grhl2を同定した。さらに解析を進めることにより、Grhl2は、3次元培養においてHPPLが形成するシストの管腔構造を拡張させる機能を持つことが明らかになった。Grhl2の発現によって、上皮バリア機能が亢進することが明らかになったので、タイト結合構成分子で、バリア機能を担う分子であるclaudin familyの発現が変化しているのではないかと考えた。Claudin familyの遺伝子およびタンパク質レベルで解析したところ、Claudin3および4が、Grhl2の導入によって発現上昇していることが明らかになった。また、Claudin3の強制発現を行うとシストの生長が促進されるが、Claudin3および4の機能を阻害ペプチドを用いて抑制すると、シストの生長が抑制されることが明らかになり、Claudin分子を介したタイト結合の機能亢進が、管腔構造形成に重要であることが明らかとなった。 さらに、Grhl2の結合配列をプロモーター領域に持つ遺伝子をデータベース上で探索することで、ターゲット分子としてRab25を同定した。Rab25の強制発現を行うと管腔の拡張が見られ、逆に優勢劣性変異体を発現することで管腔拡張が抑制された。 以上のように、本年度の研究では、転写因子Grhl2がClaudin3,Claudin4,Rab25の機能を介して、機能的なタイト結合の形成を制御することで、上皮細胞による組織形成の過程で管腔構造形成を促進していることを明らかにした。
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