研究概要 |
炎症滑膜組織には炎症性サイトカインやケモカインの発現亢進が認められているが,その役割については依然不明な点が多い.本研究では,関節リウマチなど炎症性骨関節疾患の発症ならびに骨破壊機序を明らかにすることを目的とし,誘導性関節炎マウスモデルを用いて関節炎の病態形成および破骨細胞分化・活性化におけるケモカイン-ケモカインレセプターの役割を検討した. 誘導性関節炎マウスモデルをもちいて,関節炎症局所におけるケモカイン-ケモカインレセプターの発現細胞を蛍光抗体法により解析したところ,好中球とマクロファージにケモカインMIP-1αおよびそのレセプターであるCCR1の発現を認めた.また,骨破壊部にはTRAP陽性の多数の破骨細胞が観察された.さらに,これらケモカイン-ケモカインレセプターの破骨細胞分化・活性化に及ぼす影響を検討するため,in vitroにおいて野生型マウスの骨髄細胞を破骨細胞分化誘導因子RANKLで刺激し,リアルタイムPCRを行ったところ,破骨細胞においてCCR1の有意な遺伝子発現上昇を確認した.このように,MIP-1α-CCR1を介するシグナルは炎症性関節炎において関節滑膜への好中球やマクロファージの浸潤と炎症応答の増悪,さらに破骨細胞の分化を伴う骨破壊に重要な役割を果たしていることが示唆された.本研究の追究は炎症性骨関節疾患の発症機序の解明,さらには新規治療薬の開発に繋がることが期待できる.
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