研究課題
健常脳において骨髄由来細胞が脳内のどの部位にどのような時間経過で進入し、どの細胞に分化するかを調べるため、GFP遺伝子導入C57BL/6マウス(GFP-B6)をドナー、C57BL/6マウス(B6)をレシピエントとする骨髄移植を、静脈注射法と骨髄内骨髄移植法により行った。骨髄キメラマウスの脳のパラフィン切片を作製し解析した結果、骨髄由来細胞は頭蓋内においてはまず髄膜・脈絡叢・血管周囲腔に進入した。大部分の脳実質領域には進入しなかったが、限定された離散的な小領域には進入し、突起を持つ形態に変化した。静脈注射法に比べて骨髄内骨髄移植法の方が、より多くの小領域に骨髄由来細胞が進入し、より長期間存在した。脳実質に進入した骨髄由来細胞は全てIba-1を発現する骨髄系細胞であった。この内容は現在論文にまとめ、投稿準備を進めている。次に、骨髄由来細胞の脳実質への進入が加齢に伴いどのように変化するかを調べるため、GFP-B6をドナー、若齢、老齢のB6をレシピエントとした同系骨髄移植と、若齢、老齢のSAMP10マウス(P10)をレシピエントとした同種骨髄移植を、骨髄内骨髄移植法により行った。移植4ヵ月後にキメラマウスの脳パラフィン切片を作製し、骨髄由来細胞の分布と密度について定量化した結果、B6に比べてP10の方がより広範囲でより高密度に骨髄由来細胞が進入した。特に老齢P10ではその傾向が顕著に見られた。この結果は老齢P10では脳組織が骨髄由来細胞をリクルートする作用が亢進していることを示唆しておりP10に早期に生じる神経変性と因果関係があるものと考え解析を進めている。骨髄内骨髄移植によるP10の脳老化病態の制御については、飼育環境のよい場所で実験を行う必要があるため、名古屋大学医学系研究科老年科学と共同研究を行うことにし、名古屋大学の動物施設で実験を進めるよう諸々の準備を整えた。
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