研究概要 |
本年度は、コレラ菌の産生する新規ADP-リボシル化毒素Cholix toxin(以下、Cholix)による細胞致死メカニズムを明らかにすることを目的とした。Cholixは緑膿菌の産生する外毒素Exotoxin A (ETA)とアミノ酸配列において32%の相同性しか示さないにも関わらず、非常によく似た立体構造を有している。つまり、Cholixの毒性発現解析を行うことで、本毒素のみならず、ETAの関連する細胞致死,病態発現に必須な生体分子を明らかにすることができる。 まず、種々の以下の変異体(活性中心GluをAlaに置換したE581A、二つあるfurinの切断配列RXXR (225-228 aa, 320-323 aa)をAlaに置換したHK226/227AA, KP321/322AA)を作製した。これらの変異体は、HeLa細胞に対する細胞致死活性を失っていた。更に、furinの阻害剤、furinの発現をsiRNAで抑制した場合にも細胞致死活性は阻害された。以上のことから、Cholixの細胞致死活性にはfurinが関与していることが示唆された。次に、HeLa細胞に対するIC50は0.24μg/mlであった。この濃度はマウスの培養細胞と比較して非常に高く、この毒素がマウスに対して高い毒性を示す結果であった。 次に、CholixのHeLa細胞を用いた致死メカニズムを解析した。Cholixに依る細胞死はTunnel陽性のアポトーシスを引き起こし、カスパーゼ阻害剤により抑制された。更に、Bc12ファミリーであるBax/Bakの構造変化を伴う、チトクロームcの放出も確認された。カスパーゼ阻害剤で、この放出が阻害されたことから、カスパーゼ依存的なBax/Bakの構造変化を引き起こ,していると考えられた。Cholixによる初期のカスパーゼの活性化がどのような経路でBax/Bakの構造変化を引き起こしているか今後の研究課題である。
|