研究課題
インフラマソーム形成はIL-1やIL-18を含む様々な炎症誘導因子を細胞外へと分泌し、宿主の炎症や細胞死、免疫応答などの生体反応を惹起することから感染症や自己免疫疾患などの病態に関わる重要なプロセスとして知られている。感染症においては、宿主が細胞内受容体であるNLRs(Nod-like receptors)を介して病原体由来のリガンドを認識することで感染を察知し、IL-1やIL-18の成熟化に必要なcaspase-1の活性化を促すが、その多くの反応にはアダプター分子であるASCが必須であることが報告されている。代表的な細胞内寄生菌であるリステリア(Listeria monocytogenes)感染でもASCを介したインフラマソーム形成は報告されているがNLRについては不明であった。今回我々の実験からDNAセンサーであるAIM2がリステリア感染を検知していることが明らかとなった。さらにNLRを介したリガンドの認識以外にもSykなどのキナーゼがインフラマソーム形成を制御する機構として働いていることが示唆された。一方、菌側の要因として主要病原因子であるlistedolysin O (LLO)がcaspase-1活性化に関与することを我々は2008年に報告した。そこで、このLLO分子内のcaspase-1活性化に重要な責任領域を絞り込んだところ、4つのドメインから構成されるLLOのうち、膜傷害活性に重要なドメイン4は不要であることが明らかとなった。現在ドメイン1-3内に変異のある株を作製し、さらに責任領域を絞り込んでいる最中である。以上の結果から、リステリア感染において細菌由来のDNAが細胞内で検知され得ること、またインフラマソーム形成が単にNLRを介したシグナルだけでなく他の細胞内シグナルや細菌由来の分子によって複雑に制御されていることが示唆された。現在、他の病原体やリガンド刺激でも同様の制御機構が働いているか、もしくはリステリア特異的なものなのか検討している。
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The Journal of Immunology
巻: 185 ページ: 1186-1195
Infection and Immunity
巻: 78 ページ: 2857-2867