本年度は主に「in vivoにおけるホスホマイシンのオリエンチア増殖抑制効果の検討」を行った。L929細胞を用いて培養したオリエンチアIkeda株を1×10^4菌体ずつマウス腹腔内に接種し、菌体接種5日後から0、10、20、30、50mgのホスホマイシン(FOSMICIN-S)を1日1回・14日間にわたり腹腔内投与した。菌体接種から23日後(ホスホマイシン投与終了5日後)までマウスの生存率と体重変化を観察した結果、0mg投与群ではオリエンチア接種後17日目までに全頭が死亡し生存率が0%だったのに対し、10、20mg投与群では生存率が50%に上昇し、死亡例についても生存日数の延長効果が認められた。さらに30mg以上の投与群では生存率が100%となり、マウス感染モデルにおいてホスホマイシンがツツガムシ病の治療効果を示すことが明らかとなった。さらに、投薬条件の至適化を図るため、0、2.5、5、10mgのホスホマイシンを1日2回(10時と18時)・14日間にわたり腹腔内投与し、同様の観察と解析を行った結果、0mg投与群では菌体接種後15日目までに全頭が死亡し生存率が0%だったのに対し、2.5mg・1日2回投与群では生存率が50%に上昇し、死亡例についても生存日数の延長効果が認められた。さらに5mgおよび10mg・1日2回投与群では生存率が100%となり、複数回に分けて投与することにより、より少ない濃度で治療効果が得られることが明らかとなった。マウス生存率の上昇に必要な薬剤量を体重換算すると、ヒトへの投与量として適切な範囲に収まること、また現在、治療に用いられているテトラサイクリンとは作用機序が異なることから、本剤はアレルギー等でテトラサイクリン系が使用できない場合の代替薬、あるいはテトラサイクリン系との併用薬として、ツツガムシ病の治療に新規に用いることができると考えられた。
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