研究概要 |
新しい抗真菌薬開発を目的として、深在性真菌症の原因菌として知られるCandida albicansの生存に必須なプロテインキナーゼであるCaMps1p(mono-polar spindle-1)を標的候補分子とし、そのキナーゼ活性阻害物質の探索から得られたLY83583について更に解析を進めた。これまでの研究から、LY83583はCaMps1pのヒトホモログであるCaMps1pへの活性阻害効果は持たず、CaMps1p選択的に活性を阻害し、C. albicansの増殖に影響を与えていることを明らかにした。LY83583はグアニル酸シクラーゼ阻害剤として知られているが、C. albicansにはグアニル酸シクラーゼをコードする遺伝子についての報告がない。そして、他のグアニル酸シクラーゼ阻害剤はCaMps1p活性に影響を与えなかった。つまり、LY83583はグアニル酸シクラーゼ阻害機序とは異なる作用機序でCaMps1p活性を特異的に阻害していることが示唆された。また、hMps1pの阻害剤(SP600125,staurosporine)はCaMps1pの活性阻害作用を示さなかった。LY83583そのものはヒト正常細胞、がん細胞共に細胞毒性を示し、そのままでは抗真菌剤として使用できない事が確認されたが、LY83583とCaMps1pとの特異的な結合様式を解明することが新抗真菌薬開発につながるラショナルドラッグデザインに貢献できることが予想された。既にhMps1ではいくつかの阻害剤との結合様式の報告がなされている。それを元にした計算ソフトによるシミュレーション解析からCaMps1についてもLY83583との結合に関わるアミノ酸が推定された。これらについての解析及び、CaMps1の結晶構造の解明に向けた解析が進行している。
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