研究概要 |
【研究の目的】 従来殆ど病原性を発揮しないと言われていたが、最近、壊死性筋膜炎や劇症型レンサ球菌毒素性ショック症候群患者の増加が報告されているStreptococcus dysgalactiae subsp.equisimilis(SDSE)について、以下の研究を行う。 1,ヒトCD46Tgマウスを用いたG群レンサ球菌感染モデルを確立。患者由来の強毒株を用いて感染実験を行い、病態の観察及びそのメカニズムを解明する。2,A群レンサ球菌(GAS)感染モデルの病態と比較検討する。3,SDSEとGASの感染モデルの病態の違いを菌のゲノム構造の違いから類推する。 【研究結果】 侵襲性SDSEのRE378株をTgマウスのfootpadに1x10^7CFU投与したところ、致死率は低いものの、脚の関節炎が4週間後に観察された。これに対してWTのC57BL/6Jマウスでは、関節炎は起こらなかった。感染3日後以降で投与菌はTgおよびWTマウスとも、膝下リンパ節・脾臓・肝臓・腎臓から検出されなかった。感染4週間後のTgマウスの足の骨の組織化学から、pannus(破骨細胞の活性化による滑膜の炎症と、肉芽組織の形成)が認められた。また、足骨からRNAを調製し、定量リアルタイムRT-PCRを行ったところ、破骨細胞の活性化に係わるRANKLや、炎症性サイトカイン(IL-1β,TNFα)の発現が感染2週以降で認められた。以上の結果よりTgマウスへのSDSE感染では、菌が検出されなくなっても感染局所に慢性炎症を引き起こし、病態を惹起すると考えられる。
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