前年度の当該研究において、サルモネラ感染後期の腸炎にはSPI-2 III型分泌機構が重要な役割を果たすことを明らかとした。そこで、SPI-2による腸炎に関わるIII型エフェクターを同定するため、これまで報告されているエフェクターの欠失変異株をマウス腸炎モデルに感染し、感染マウスの盲腸における炎症程度を野生株感染マウスと比較した。しかしながら、用いた全てのエフェクター変異株において、感染マウスの盲腸の炎症の程度は、野生株感染マウスとそれと同程度であったことから、腸炎に関わるエフェクターを同定することはできなかった。 一方、SPI-1およびSPI-2 III型分泌機構の両方から分泌されるSpvCについてはその酵素活性(リン酸化スレオニンリアーゼ:PTL)が既に他のグループによって報告されていたが、サルモネラ感染におけるSpvCの機能は不明であった。そこで、マウス腸炎モデルを用いてSpvCの機能を詳細に解析した。その結果、サルモネラはPTL活性により宿主のmitogen-activated protein kinases(MAPKs)を脱リン酸化(不活化)し、感染初期の炎症を回避することで全身への菌の拡散を可能にすることが示され、サルモネラ感染におけるSpvC役割のひとつが明らかとなった。
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