敗血症の病態では、過剰に産生された活性酸素などにより、組織の損傷が起こりやすくなっている。一方、生体は感染の重篤化、あるいは外傷による組織障害に際し、危険信号を周囲に伝える"alarmlin"と呼ばれる一連の分子を細胞外に放出し、免疫担当細胞を刺激・賦活化する。これらのalarmlinの中で核内タンパク質であるHMGN1は、細胞外に漏出すると、樹状細胞に対するサイトカイン産生・分化誘導能を示すことが最近見出され、alarmin候補として注目されているが、実際に敗血症の病態で働いているかは不明である。H22年度は、マウスマクロファージ様細胞RAW264.7をLPS刺激し、上清へのHMGN1の放出についてWesternblotによる検出系を確立するとともに、以下の知見が得られた。すなわち、RAW264.7細胞を10-100ng/mlの大腸菌由来LPSで刺激したところ、6時間ではHMGN1の放出は検出できなかったが、24時間ではHMGN1が上清中に検出された。またLDH assayを行いこの時の細胞のviabilityを調べたところ、HMGN1の放出と正の相関関係にあった。また、24時間刺激後の上清ではIL-1βが上昇していた。以上のことから、現在、HMGN1の放出機構について検討中である。
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