本年度は、ランダムペプチドライブラリーによらない既知の配列ライブラリーから、Stx1のサイト2に特異的に結合するプローブをスクリーニングするために、Stx1とStx1のサイト2変異体との結合性の相違を数百種類のサンプルについて一度に評価する系を確立した。具体的には、Intavis AG社のスポットペプチドシンセサイザーを用い、専用セルロースシート上に多価型ペプチドライブラリーを合成することとした。系の確立にあたっては、すでに我々が開発したStx2のサイト3特異的阻害薬PPP-tetの配列(PPPRRRR)を使用した。シートには1価のアミノ基が発現しているため、シート上に合成されるペプチドは全て1本鎖となる。このため、クラスター効果が発揮できない。そこでペプチドを多価にするために、シート上のアミノ基に2価のアミノ基を有する化合物(2価ペプチド合成核構造)を結合させた。また、シート上のペプチドとStx1の結合親和性をあげるために、基盤となるセルロースシートと核構造の間のスペーサーの長さ、ペプチドの合成密度について最適化をおこなった。その結果、スペーサーの長さは炭素6個分(アミノヘキサン酸1個)、ペプチドの合成密度については理論上、シート上のアミノ基すべてに2価ペプチド合成核構造を結合させることで、Stx1とシート上の2価ペプチドが高親和性に結合することが確認された。現在、シート上に4価ペプチドを合成する系の確立も試みており、2価ペプチドシート合成と同様、スペーサーの長さ、ペプチド合成密度について最適化を行っている。
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