研究概要 |
STECが産生する主要な病原因子であるShiga toxin (Stx)は、Stx1とStx2のファミリーからなる。これらStxはStx感受性ベロ細胞に対してはほぼ同等の毒性を示すにもかかわらず、臨床的にはStx2の方が圧倒的に症状の重篤化に関与する。しかしながら、この個体レベルでの毒性発現の相違に関係する分子機構はいまだ不明であることから本研究では、両者の受容体結合部位の相違に着目し、ここを標的とする新規プローブを同定することとした。平成22年度ー23年度までに、多価型ペプチドライブラリーのシート合成技術を新たに開発し、本法を用いてスクリーニングを行い11種類の多価ペプチドの同定に成功した。そこで24年度はこれらペプチドの活性評価を行った。11種の多価ペプチドは、ELISA法による検討からいずれのペプチドもG62Aに対する結合が、Stx1Bサブユニットへの結合に比べて1/3程度に低下していた。このことから11種のペプチドはStx1のサイト2を特異的に認識していることが示された。さらにベロ細胞を用いたStx細胞障害活性に対する各ペプチドの阻害効果を検討したところ、4種のペプチド(PQA-tet,KGA-tet, VIA-tet, YTA-tet)がStxによる毒性を低濃度で阻害した。Biacoreを用いてKD値を算出したところ、それぞれPQA-tet: 3.3μg/ml, KGA-tet: 1.2μg/ml, VIA-tet: 2.5μg/ml, YTA-tet: 2μg/mlであった。以上より、本研究で確立した多価型ペプチドシート合成技術を用いることで、従来の多価型ペプチドライブラリー法では同定しきれなかったペプチド配列を詳細に解析できるようになり、最終的に複数種類の候補ペプチドを同定することができた。
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