TLRシグナルの無秩序な亢進が原因となる敗血症は、米国一国においてさえ年間20万名もの死亡者数に達する疾病でありながら、有効な治療薬は上市されていない。本研究は、敗血症治療薬候補分子として特許化したToll-like receptor 4(TLR4)結合性ペプチドSTM28とその変異体、並びに発がん性が認められていないマイコトキシンのTLRシグナルへの抑制効果を知的アドバンテージとして、これらTLRシグナル抑制分子群の機能解析を実施すると同時に、同分子群の敗血症の治療薬のリードコンパウンドとしてのブラッシュアップを進め、臨床試験への供試を目指す。最終年度は、in vitroのTLR4シグナルアッセイ系による、マイコトキシンの1種citrinin(CIT)のTLR4シグナル伝達系への影響を解析した。 LPS誘導性一酸化窒素(NO)産生に対するcitrininの作用は、細胞毒性が認められない濃度域において濃度依存的な抑制作用となることが明らかとなった。LPS誘導性NO産生を触媒する誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現レベルもNO産生に対する作用と同様にcitrininが阻害することが確認された。iNOSレポーター活性についてもLPSによる同活性の誘導をcitrininが阻害した。 今回得られた結果は、シトリニンも敗血症治療薬のリードコンパウンドとしてのポテンシャルを有することを示唆するものと言える。
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