人獣共通感染症の病原体レプトスピラは,その血清型により特定の動物種の腎臓に定着指向性があることが知られているが,その分子機構は明らかとなっていない.そこでレプトスピラタンパク質を大腸菌のAIDA transporterとの融合タンパク質として大腸菌の細胞表面上に発現させる系を用いて,レプトスピラの細胞接着タンパク質の同定を試みた.ラット腎臓に特異的に定着するレプトスピラ血清型Manilae (UP-MMC-NIID)のゲノムライブラリーを作製し,組換え大腸菌のラット腎臓上皮由来培養細胞NRK52EおよびHeLa細胞への結合を指標にスクリーニングを行ったが,特定のクローンを得ることはできなかった. 一方レプトスピラ遺伝子破壊株の細胞接着性を指標として,レプトスピラ細胞接着タンパク質の同定を行うために,marinerトランスポゾンを用いたランダム挿入変異法を試みた.エレクトロポレーション法によるUP-MMC-NIID株へのプラスミド導入では,1e-10~-11の効率でしか変異体を得ることができなかったが,大腸菌との接合によるプラスミド導入によって1e-8程度の効率に改善することができた.変異株のトランスポゾン挿入部位の決定を順次行っており,遺伝子が破壊されている株の細胞接着を今後調査する.また非病原性レプトスピラL. biflexaでは接合法により1e-6の効率で変異体が得られることから,高い形質転換能をもつ病原性レプトスピラのスクリーニングを継続する.
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