既知イソニアジド耐性遺伝子に変異を持たないイソニアジド耐性臨床分離株を同定し、5種類の新規変異を見出した。今年度は、これらのうち4種類の変異について機能解析を実施した。4種類の変異とは、furA c41t変異、furA-katG遺伝子間領域(Int)におけるg-7a変異・a-10c変異・g-12a変異である。FurAはfurA-katGオペロンの負の転写制御因子である。そこで、furA c41t変異が転写制御に与える影響を検証するために、変異遺伝子産物の転写調節領域に対する結合能と、変異がkatG発現に与える影響を調べた。その結果、c41t変異は結合能及びkatG発現量に影響を与えなかった。また、イソニアジド感受性株においてfurA c41t変異を再構築しても、イソニアジド耐性は与えなかった。furA c41t変異は単独ではイソニアジド耐性を与えないが、臨床分離株における知見から、イソニアジド耐性の検出マーカーになる可能性がある。IntにはkatG発現に影響を与えるシスエレメントが存在する。そこで、Intにおいて見出した3変異がkatG発現に与える影響を調べた。その結果、3変異はいずれもkatG発現を抑制した。また、イソニアジド感受性株において3変異をそれぞれ再構築すると、イソニアジド耐性が与えられた。3変異の周辺領域はkatGのSD配列だと予想され、変異によって16S rRNAとの相補性が低下してkatG発現量が減少したのだと考えられる。Intにおいて見出した3変異は、新規イソニアジド耐性変異である。これらの結果は、学術的に重要な知見を供するだけでなく、イソニアジド耐性結核に対する遺伝子診断法に応用できる。本研究成果は学術論文として公表されている。
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