本研究課題では腸管出血性大腸菌(以下EHEC)のベロ毒素遺伝子stxを保有するStxプロファージの塩基配列の多様性とStx産生性の関連性について、stxの下流領域(機能未知遺伝子を含む)の塩基配列多型解析を行っている。 一昨年度、本研究課においてstx2の下流領域の塩基配列解析のルーチン化と解析した塩基配列検索のデータベースを構築した。本年度はこれらを利用し、毒性の強いstx2、stx2多型の1つであるstx2c、およびstx1についてstxの下流領域の塩基配列多型解析を行った。 その結果、本年度までに解析対象としたEHECのべ145株のstx下流領域を解析し、Stx産生性についてRPLAによる定量をほぼ終了した。今後は、これらの解析結果についてstx下流領域の多型の系統解析およびその組み合わせとStx2産生量についてその関連性を明らかにする予定である。特に0157については従来より特定の遺伝系統に高病原性が指摘されていた。本年の解析においても、その0157遺伝系統株において、特定のstx2及びstx2c下流塩基配列を持つことが示唆されている。これらの遺伝系統におけるStx2産生性との関連性についても今後解析する予定である。 また、上記解析中に、Stx2産生およびstx2遣伝子構造において、通常のstx2置伝子を保有するO157とは明らかに異なる株を検出した。本年度これらの株のstx2下流の塩基配列解析を完了した。今後.は、この0157株についても他のStxプロファージの塩基配列多型との比較を行うことにより、Stx2産生性への寄与の解明を行う予定である。
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