研究概要 |
HAART(highly active anti-retroviral therapy)療法が発達した現在でも、エイズ根治は不可能である。その理由として、エイズの原因ウイルスであるhuman immunodeficiency virus (HIV)の潜伏感染が挙げられる。しかしながら、HIVが潜伏化するメカニズムは明らかになっていない。そのため、本研究はHIV潜伏感染決定メカニズムの解明を目的としている。 H22年度は、生体内におけるHIVの潜伏感染を再現するために、ヒト血液幹細胞移植マウス(ヒト化マウス)を用いた感染実験を行った。ウイルスは、LTRプロモーターよりウイルスの転写調節因子TatとGFPの発現のみを行う非増殖型HIVベクター(single round-HIV, SR-HIV)を用いた。SR-HIV感染2週間後のヒト化マウスの抹消Tリンパ球において、少数(1%以下)の恒常的GFP陽性細胞が検出された。また、感染マウスより分離した抹消リンパ球をCD3とIL-2の増殖刺激環境下で培養したところ、GFP陽性細胞の増加も確認された。すなわち、ヒト化マウス内で潜伏感染細胞が構築されている事が確認された。 また、これまでの培養細胞を用いたin vitroの研究によると、HIVプロウイルスの組込み位置がHIVの潜伏化のひとつの要因であることが明らかになっている。そこでH22年度はHIV感染ヒト化マウスの抹消Tリンパ球におけるプロウイルスの組込み位置解析を行うためのlinker PCR法の確立に成功した。 今後、本年度確立したプロウイルスの組込み位置決定法を用いて、HIV感染ヒト化マウス抹消血中の恒常的GFP陽性細胞、並びに、潜伏感染細胞におけるプロウイルスの組込み位置解析とエピジェネティクス解析によって、in vivo環境でHIVの潜伏感染を誘導する主要な原因を突き止める。
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