従来使用していたインフルエンザワクチン(HA)をモデルとして用い、人工サーファクタント(SSF)と抗原とを融合した経鼻ワクチン作成法の検討を行った。従来HAとSSFの懸濁液を超音波処理し、これによりSSFとHAを均一に分散して両者を融合する作成法を確立していたが、この方法ではSSFとHAが完全に融合できていないことが粒度分布計を用いたワクチン剤形の評価などにより明らかとなった。ワクチン剤形の評価を基により高効率なHAとSSFの融合を行える製造法の検討を行ったところ、凍結乾燥を用いた、より高効率な融合を行える作成法の確立に成功した。この方法を基として作成された経鼻ワクチンは、マウスを用いた接種試験において、超音波処理で作成された経鼻ワクチンを超える抗体誘導効果を発揮した。 この新たに見いだした作成法により、M2抗原とSSFを融合させた経鼻ワクチンを作成した。HA抗原を用いた検討により、SSFは抗原の免疫担当細胞へのデリバリーを高めることで経鼻ワクチン増感を行うことを明らかとしている。そこで、M2抗原を融合させたSSF経鼻ワクチンの有効性のスクリーニングを、骨髄樹状細胞への蛍光標識M2抗原のデリバリーを検討することによりおこなった。SSFはM2の細胞へのデリバリー効果を亢進することが明らかとなった。また、M2抗原に脂肪酸アンカーを付与してSSFへの融合をより高め、さらに高いデリバリー効果をもつ経鼻ワクチンの作成を行うことに成功した。この経鼻ワクチンにおけるSSFによるM2抗原のデリバリー効果は、従来のHA抗原のデリバリー効果と同等レベルに達しており、M2抗原による抗体誘導の増感を期待できる経鼻ワクチンを作成できたことが期待された。
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