平成22年度に作成された経鼻ワクチンによる、マウスへの接種試験を試みた。 合成ペプチドであるM2は、ウイルス由来のタンパク抗原であるインフルエンザ不活化ワクチン(HA)よりも抗原性が低く、従来のSSFアジュバントを用いたワクチン接種では効果が得られないことが懸念された。そこで、SSFのデリノミリー効果をさらに高めるため増粘剤としてポリマーを混合した新しい経鼻ワクチンの作成を試みた。抗原にはHAを用い、これにSSFを混合した後に増粘剤を添加した。様々な増粘剤により作成された数種類の増粘剤添加経鼻ワクチンをマウスに経鼻接種したところ、アクリル酸のポリマーを添加したHAとSSFの経鼻ワクチンにおいて、従来のHAとSSFのみで作成された経鼻ワクチンよりもさらに高い鼻腔粘膜分泌型抗体と血中抗体の誘導が検出された。 そこでこの強力な免疫活性可能を持つアクリル酸ポリマー添加型のSSF経鼻ワクチンを、M2ペプチドを抗原として作成し、マウスへの経鼻ワクチン接種試験に使用した。抗原にはM2ペプチドあるいはパルミチン酸アンカーを付与したM2ペプチドを用い、SSFと混合後アクリル酸ポリマーを添加し、これらをマウスへ経鼻接種した。SSFによる高いデリバリー効果を示したパルミチン酸アンカー付与M2ではM2特異的な抗体はほとんど誘導されず、脂肪酸付与がペプチドの立体構造などを変化させ、抗原性に悪影響を与えた可能性が考えられた。一方M2ペプチドを用いた経鼻ワクチンでは、M2抗原特異的な抗体が、鼻腔粘膜および血中の双方に誘導され、M2ペプチドを用いた経鼻ワクチン開発の可能性が示された。
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