エンベロープウイルスの多くは、スパイク蛋白質前駆体が細胞内外の宿主プロテアーゼによって切断活性化されることで感染性を獲得する。非エンベロープウイルスであるロタウイルスも外殻スパイク蛋白質VP4が細胞外トリプシンでVP5*とVP8*に切断活性化されることで感染性を獲得する。今年度、リバースジェネティクス系を用いて、VP4上のトリプシン切断領域に細胞内プロテアーゼであるフューリンの認識配列を導入した組換えロタウイルス(KU//rVP4-R247Furin)を作製し、トリプシン非存在下でのロタウイルス多段階増殖の可能性を検討した。フューリンはKU//rVP4-R247Furinビリオン上のVP4を高効率で切断したが、KU//rVP4-R247Furinはトリプシン非存在下では多段階増殖しないのみならず、トリプシン存在下でもMA104およびCV-1細胞における増殖能は野生型VP4を有する親株KU//rVP4に比べて大きく低下していた。KU//rVP4-R247Furin感染細胞では、総ウイルス量はKU//rVP4と同程度であったが、培養上清中のウイルス量が著しく低下していた。一方で、フューリンを抑制あるいは欠損した細胞株においては、KU//rVP4-R247FurinはKU//rVP4と同程度の増殖能を示した。これらのことから、細胞内でのVP4切断活性化はロタウイルス増殖には負に作用する可能性が考えられた。
|