研究課題
上皮細胞を用いて、麻疹ウイルスHタンパク質のエピトープとその保存性について解析した。麻疹ウイルスHタンパク質の主要な保存エピトープは3カ所であり、その他のエピトープは株によって異なる抗原性を示すことが明らかになった。保存されているエピトープについての重要な知見は、(1)受容体結合に直接関与する多くのアミノ酸自身が、ひとつの保存エピトープを構成していること、(2)また、別の保存エピトープは、Hタンパク質二量体同士が相互作用して四量体を形成する接触面、ならびに、Fタンパク質との相互作用に関係する領域の双方に位置すること、すなわち、ともに機能的構造的にアミノ酸変化を許容し難いということである。ただし、ウイルスの増殖性の大幅な低下、ならびに受容体利用能の一部消失を伴うことにより、6つの全エピトープにアミノ酸変異を導入し、全エピトープの抗原性(モノクローナル抗体への反応性)を変化させることができた。しかし、このような(ウイルスの高度な弱毒化を伴う)自然界では起こり得ないと想定される大幅な改変によってもワクチン血清による中和の程度に変化はなかった。これらの結果から、Hタンパク質の抗原エピトープがアミノ酸変異を許容し難いことに加えて、ワクチンにより得られる抗体が、保存エピトープ3カ所を含む多くのエピトープに対して同時に、しかも強力に働いていると考えられ、今後も麻疹ウイルスの抗原性変化は生じ得ないであろうことを、科学的に立証した。
2: おおむね順調に進展している
麻疹ウイルスの抗原性について論文を2報投稿した。
上皮細胞への感染様式については明らかになりつつあるので、今までと同様の研究方針で、さらに神経細胞への感染についても加えて研究を進める。また、2報の投稿済みの論文で明らかにしたHタンパク質のすべてのエピトープの変異体についてさらに研究を進める。
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Journal of Virology
巻: 87 ページ: 666-675
10.1128/JVI.02033-12
巻: 87 ページ: 3583-3586
10.1128/JVI.03029-12