研究概要 |
Epstein-Barr(EB)ウイルスは伝染性単核球症、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、胃癌などの原因となりうる臨床的に重要な病原性ウイルスである。EBウイルスは初感染ののち主にBリンパ球内で潜伏状態を維持しているが、一部が再活性化して溶解感染に至り、子孫ウイルスを放出して感染を拡大する。本研究では再活性化において重要な働きをするEBウイルスBZLF1遺伝子に着目し、EBウイルス再活性化を制御する因子を包括的かつ詳細に解析することを目的としている。 当該年度の研究は概ね順調であった。 再活性化において重要な働きをするEBウイルスBZLF1遺伝子産物のSUMO修飾による再活性化制御メカニズムについては、すでに学術雑誌に受理されている(Murata et al., JBC 2010)。 JDP2というリプレッサーによるBZLF1遺伝子転写および再活性化抑制については、解析を終えて学術誌に投稿し、最近リバイスの再投稿をおこなったばかりである。 低酸素刺激による再活性化については、レポーターアッセイで同定したBZLF1プロモーター上のHRE(低酸素応答エレメント)が、残念ながら実際のウイルスゲノム中では機能していないことが、ウイルスへの点変異導入で明らかになった。今後は組み換えウイルスを駆使してより丁寧な解析をおこない、正しいHREの同定を目指していきたい。さらに、スクリーニングで得られたこれら以外の因子についても詳細な解析をおこない、EBウイルスの潜伏感染の維持と再活性化の分子メカニズムについての包括的な研究を推進していく。
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