研究概要 |
Epstein-Barr(EB)ウイルスは伝染性単核球症、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、胃癌などの原因となりうる臨床的に重要な病原性ウイルスである。EBウイルスは初感染ののち主にBリンパ球内で潜伏状態を維持しているが、一部が再活性化して溶解感染に至り、子孫ウイルスを放出して感染を拡大する。本研究では再活性化において重要な働きをするEBウイルスBZLF1遺伝子に着目し、EBウイルス再活性化を制御する因子を包括的かつ詳細に解析することを目的としている。 当該年度の研究は概ね順調であった。 潜伏感染の維持、再活性化の切り替えにおいて重要な働きをするEBウイルスBZLF1遺伝子産物の転写抑制に関わるJDP2というリプレッサーについて、解析を終えて学術誌に投稿、受理された(Murata et al.,JBC2011)。このほかの網羅的解析の詳細な検討に関しては、現在までに変異導入組み換えウイルスの作製、性状解析まで含め、ほとんどの解析を終えており、投稿準備中である。これまで過去の類似の研究ではレポーターアッセイが主に用いられてきたが、申請者の確立した組み換えウイルスの作製系は非常に精度が高くスピーディーなもので、革新的なものとなっていると自負している。この中では特に、再活性化におけるMEF2(myocyte enhancer factor2)ファミリー転写因子の重要性について詳細に解析した。 このようなEBウイルス感染様式の変化は、ウイルス増殖のみならず病態や細胞増殖性にも深く関係しており、その解析は非常に意義深いといえる。
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