本研究の目的は第4のリンパ球とされるNKT細胞がメモリーT細胞の数と機能をどのように調節しているのか明らかにすることである。さらに、活性化したNKT細胞による効率的なメモリーCD4T細胞の形成機構や、免疫疾患制御のメカニズムの解明を目指す。 これまではNKT細胞の活性化がメモリーTh1またはTh2細胞の増殖を誘導することがわかっている。そこでノックアウトマウスや中和抗体を用いた実験から、NKT細胞の産生するIL-2などのサイトカインがメモリーTh1またはTh2細胞を増殖させていることがわかった。特にセントラルメモリー細胞と呼ばれる集団においてその増殖が顕著であった(I)。 またα-GalCer投与によるメモリーTh2細胞はNKTの産生するIL-2によりEomesの発現を上昇させ、抗原刺激に対してよりIFN-g産生の増加とTh2サイトカイン産生の低下を誘導した。このことは分化が終了したと考えられるTh2細胞は可塑性をもっており、NKT細胞の活性化によりその機能を変化できることを示す(II)。 NKT細胞による細胞の増殖はメモリーTh1/Th2細胞ならずnatural occurring memory CD4 T細胞やメモリーCD8T細胞など他のメモリーT細胞においても誘導することができた。これらの結果はNKT細胞の活性化が効率的なワクチン開発や病態制御の一助になると考えられる(III)。 今後は、こうした現象を効率よく誘導するNKT細胞のリガンドや投与方法を探索し、活性化NKT細胞のメモリーCD4T細胞形成や維持における役割を明らかにする。
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