研究課題
本年度は前年度に引き続き、Unc93 homolog B1 (Unc93B1)の34番目に位置するアスパラギン酸をアラニンに置換した変異マウス(D34Aマウス)を用いて相反的なTLR7/TLR9バランスの破綻が生体に及ぼす影響の解析を行った。129バックグラウンドのマウスに関する解析は完了し、Unc93B1の機能破綻によるTLR7の過剰応答が肝炎・脾腫・血小板減少などの各種表現型を誘導すること、自然免疫系のみならずB細胞やT細胞などの獲得免疫系もTLR7/TLR9バランスの破綻によって異常に活性化されることなどが明らかとなり、TLR7/TLR9バランスは生体の恒常性維持に必須の機能であることが示された。その後C57BL/6系統やBALB/c系統のD34Aマウスについて解析を行い、B6系統では半数程度が1年以内に死亡することを確認した。また、BALB系統ではB6系統と比較して表現型の誘導が弱く、B6マウスが4ヶ月齢程度で血小板減少を起こすのに対してBALB系統では見られない。興味深いことに、両系統のD34A変異マウスにおいてTLR7/TLR9バランスの破綻は見られており、どちらもTLR7の応答性が亢進してTLR9の応答性が減弱している。このことは、TLR7/TLR9バランスの破綻が直接的に各種表現型を誘導するのではなく、遺伝子背景に依存的な調節因子があることを示唆している。なお、BALB系統はTh2優位な系統であるため、Th1サイトカインが系統差に寄与している可能性を予測してIFN-γを欠損したD34Aマウスを作製した。しかし、血小板減少においてはIFN-γが発現しているD34Aマウスと有意な差が見られなかった。今後は他の表現型に対する各種サイトカインの寄与を調べると同時に、マイクロアレイなどを使用した調節因子の探索を行う。
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Immunity
巻: 35 ページ: 69-81
10.1016/j.immuni.2011.05.010
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/kanseniden/public/
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/unc93_homolog_bltolllike_recep.php