研究概要 |
IκBNSは核に局在するNF-κB転写因子の活性調節因子の一つであり,細胞が刺激を受けるとその発現が一過性に誘導されるという特徴を持つ。本研究では,液性免疫系におけるNF-κB転写因子の重要性に注目し,その活性化調節因子の一つであるIκBNSのBリンパ球の分化及び抗体産生における機能とその作用機序の解明を目的としている。 H22年度は,IκBNS欠損マウスのリンパ球サブセットの分化とIκBNSの発現動態をin vivo及びex vivoで解析した。その結果,IκBNS欠損マウスの骨髄ではほぼ正常なB細胞の分化が見られるものの,B前駆細胞のIL-7応答性は野生型細胞よりも低かった。一方末梢組織では腹腔のB1細胞の欠如と脾臓の辺縁帯B細胞分化の遅延が見られ,IκBNSの欠如がB細胞分化に影響を与えることが示唆された。また,IκBNS欠損マウスでは血清中のIgMとIgG3量が著しく低いが,これはIκBNSの欠損によってIgMの分泌とIgG3へのクラススイッチ機構が損なわれるためであることがin vitro実験によって示された。更に,IκBNS欠損マウスの解析から得られた結果がB細胞に内因するものかを検証するためにB細胞の成熟を欠損させたマウスを入手し,IκBNS欠損マウスから分離したB細胞を移入する実験を行っている。 これまでの研究によって,IκBNSがB細胞の分化や抗体産生に代表される液性免疫応答の調節に重要であることを示唆するデータが蓄積されつつある。 現在,補助を受けた研究成果による論文を作製中である。
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