研究概要 |
胸腺はT細胞の正常な分化選択に必須の中枢リンパ組織である。申請者はこれまでに、通常の上皮細胞においてタイトジャンクション(TJ)を構成する膜タンパク質クローディン(Cld)3,4が、TJを形成しない成熟胸腺上皮細胞の一部に発現を認めること、またこのCld陽性細胞が末梢自己抗原に対する免疫寛容に重要な役割を果たすAutoimmune regulator (Aire)遺伝子を発現する特殊に機能分化した髄質上皮細胞であることを見出した。さらにCld3,4の発現を指標にすることで、Aire陽性上皮細胞の前駆細胞を発生初期の胸腺原基から同定することに成功した (Nat Immunol. 2007)。しかしながら、Aire陽性の特殊な髄質上皮細胞のみが通常の上皮細胞と同様に上皮特異的接着分子であるCldを発現する生理的意義については明らかでない。本研究では、胸腺上皮細胞に発現するCldの機能を明らかにし、胸腺上皮細胞が関与する免疫寛容と自己形成の分子メカニズムの理解に新たな分子基盤を与えることを主目的とした。胸腺上皮に発現するCld3とCld4の単独KOマウスでは、胸腺構造およびT細胞分化に顕著な異常は認められなかった。そこでダブルKOマウスを作製を行った。両遺伝子間の距離はきわめて近く、掛け合わせによる作製はほぼ不可能と考えられたたため、Cld3KOのES細胞にCld4KO用のベクターを導入する方法によって行った。この研究期間中に、DKOを無事得ることができた。
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