研究概要 |
本研究では、自己免疫疾患や慢性炎症などの病態形成に重要であるIL-6 Ampの標的遺伝子を同定しようと試みた。これまでに我々は、線維芽細胞などにおいて、IL-17A/NF-kBシグナルとIL-6/STAT3シグナルが協調してIL-6や他のケモカインなどの産生を相乗的に上昇させるIL-6 Ampという機構を発見し、これが自己免疫疾患発症に重要であることを示してきた。昨年度、ケモカインのひとつCCL20がIL-6 Ampの標的のひとつであることを示し、IL-6 Ampを基盤に自己免疫疾患の発症に重要な4ステップモデルを提唱できた(Murakami M^*,Okuyama Y^*,Ogura H^*,et al.(^*equal contribution),J.Exp.Med.208(1):103-114,2011)。 今年度は、IL-6 Ampよって発現上昇する液性因子Yについて解析を行なった。サイトカイン投与による関節炎誘導モデルにおいて、関節局所でYのmRNA発現は上昇しており、また、shRNA発現レンチウイルスの関節内注射によってその発症は抑制された。またYのシグナル特異的な阻害剤を処理すると、関節炎モデル、および多発性硬化症モデル相方においてその発症を抑制した。また試験管内で、Yは線維芽細胞にNF-kBの活性化を誘導し、Cc120やIL-6、Yなどの各標的遺伝子のIL-17とIL-6共刺激による発現を更に相乗的に増強した。重要なことに、Yは種々のヒト自己免疫疾患患者の血清中の濃度が有意に上昇していた。以上から、Yはヒト疾患においてもIL-6 Ampの重要な標的で、IL-6Ampの更なる活性化を介して病気を増悪する役割をもつものと考えられた(論文リバイス中)。これらの成果は、病気の発症機序の基礎的な理解が進むばかりか、それらの治療法や診断マーカーの開発に大きく貢献する大変重要なものである。
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