われわれは、これまでにリンパ節の高内皮細静脈(HEV)を含む微小血管に発現するシアロムチンnepmucinを世界に先駆けて同定し、nepmucinがリンパ球の接着および血管外遊走を媒介することを明らかにしてきた。また、われわれは、nepmucinのリガンドの同定を試みる過程で、nepmucinはアポトーシス細胞の表面に露出するホスファチジルセリンに選択的に結合を示すことを見出した。本研究課題において、私は、リンパ節から単離したHEV内皮細胞が少なくとも部分的にnepmucin依存的にアポトーシスリンパ球を取り込むことを見出した。これまでHEV内皮細胞によるアポトーシス細胞の取り込みは着目されてこなかったが、電子顕微鏡解析の結果、HEV内皮細胞は糸状仮足様の突起を伸ばし、アポトーシスを包み込む過程が観察されたことから、HEV内皮細胞は積極的にアポトーシス細胞の取り込みに関与する可能性が示唆された。また、in vivoにおいて、野生型マウスのHEV内皮細胞は、ステロイド投与により誘導したアポトーシスリンパ球を取り込んだが、nepmucin欠損マウス由来のHEV内皮細胞ではその割合は減少した。現在、HEV内皮細胞によるアポトーシス細胞の取り込みの生体的意義の検討を進めている。これらの知見は、血中のアポトーシス細胞の効率よく除去する機構として、これまで殆ど考慮されてこなかったHEVの役割を明らかにした点で重要である。 また、nepmucinは脾臓において辺縁洞の血管内細胞に選択的に高発現することから、抗nepmucin抗体を用いると白脾髄および赤脾髄の境界を容易に染め分けることができる。私は、自身の作製した特異モノクローナル抗体を用いて、定常状態で免疫反応制御に関与する形質細胞様樹状細胞(pDC)がケモカイン受容体CCR7およびCXCR4依存的に脾白脾髄に移動することを見出した(投稿中)。したがってnepmucinは制御性免疫細胞を含む種々の免疫担当細胞の動態を解析する上で有用な指標として使用できる可能性がある。
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