成熟T細胞が非自己の侵入に対して迅速に反応するにはサイトカインや自己ペプチドなどの恒常的刺激を受けて数的、質的に維持されなければならない。しかし、これらの刺激分子がどのような時期にどのような細胞によってT細胞に供与されるかは不明である。本研究課題は、T細胞ホメオスタシスの場の実体解明を目指した長期計画の基盤として、末梢リンパ組織におけるストローマ細胞の詳細な分類法の確立を目的としている。平成22年度は、当初の実施計画に基づき、フローサイトメトリーによるストローマ細胞表面マーカーのスクリーニングを行なった。その過程で、従来一般的に使用されてきたストローマ細胞の単離法では、一部の細胞の回収効率が安定しないという技術的問題に直面した。そこで、まず、市販の10種類の酵素について、単独使用あるいは他の酵素と併用した場合の回収効率を評価し、適切な実験条件を確立した。この単離法で得られたリンパ節のストローマ細胞において、従来より使用されている血管系および間葉系マーカーに加え、各種接着分子、MHC、サイトカイン受容体などの発現を検討した。これらの検討から、胸腺および末梢リンパ組織のストローマ細胞の間で類似の表現系を持った細胞が認められ、さらに遺伝子改変マウスを用いた検討から、これらの細胞が発生段階において共通のシグナルを必要とすることが示唆された。
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