本研究課題は、T細胞ホメオスタシスの場の実体解明を目指した長期計画の基盤として、末梢リンパ組織を構成するストローマ細胞の詳細な分類法の確立を目的とした。特に、中枢リンパ組織である胸腺との比較検討のなかから、末梢ストローマ細胞の分類に利用可能な分子マーカーを見つけること、またこれをもとに、T細胞ホメオスタシスの制御に関与するストローマ細胞サブセットの同定に重点を置いた。平成23年度は、上皮細胞、血管内皮細胞、間葉系細胞、間葉系幹細胞の分類に用いられる一般的な分子マーカーの発現を、正常マウスの胸腺およびリンパ節を構成するストローマ細胞について免疫組織学的解析およびFACS解析により検討した。その過程で、alpha smooth muscle actinを高発現する血管周囲細胞に着目した。これらの細胞は、胸腺およびリンパ節において特徴的な組織内分布を示す一方で、リンパ組織における機能がほとんど明らかにされていない。Alpha smooth muscle actinの発現を各種遺伝子改変マウス(Rag欠損、ZAP70欠損、TCRトランスジェニック、CCR7欠損、LTb受容体欠損)で観察したところ、LRb受容体欠損マウスの胸腺において、ほぼ完全に消失していた。現在、alpha smooth muscle actin-GFPトランスジェニックマウスの導入を完了し、今後、alpha smooth muscle actin発現細胞の単離と機能解析を行なう予定である。これらの結果をもとに、新たなストローマ細胞の機能を解明することで、リンパ組織における免疫制御システムの理解に貢献しうる。
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