研究課題/領域番号 |
22790479
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 敬一朗 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (90391995)
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キーワード | AID / 腸管免疫組織 / 全身免疫組織 / B細胞 / T_<TH>細胞 |
研究概要 |
平成22年度にAID (activation-induced cytidinede aminase)の発現によりRFP(赤色蛍光タンパク質)を発現するレポーターマウスを作製したが、平成23年度はさらにAIDの発現によりKaede(紫光の照射により緑色から赤色へと変色する光変換蛍光タンパク質)を発現するマウスを作製し、これらのマウスを用いてAID発現細胞の運命解析を詳細に行った。その結果、腸管免疫組織において活性化されてAIDを発現したB細胞が腸管組織外へと遊走して脾臓など全身の免疫組織へと分布している事が明らかとなった。この観察によって、腸管由来のB細胞が腸管外の全身免疫組織においてT_<TH>細胞との相互作用を持つ可能性が考えられる様になり、腸管免疫組織における免疫反応がどのように全身の免疫反応に関与するのかを検討して行く事が可能になった。これは、腸管免疫系における反応の特殊性と、その影響がどのように全身へと伝わるのかを理解する上で鍵となる現象であると考えている。現在、AIDの発現によりジフテリアトキシン受容体を発現するマウスを作製しており、このマウスではAIDを発現したB細胞をジフテリアトキシンの投与によって除去する事が可能である。これらの遺伝子改変マウス用いて、AIDを発現したB細胞がどのような情報を腸管から全身へと運搬しているのかについて詳細な検討を行い、腸管免疫組織における免疫反応の意義について新しい側面を明らかにする為の研究を継続していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、腸管免疫組織における胚中心反応の特殊性についての検討は困難であると考えていた。しかし、新たなKaede発現レポーターマウスを使用する事により、腸管免疫組織の特殊性のみならず、腸管の反応がどのように腸管外へと影響を及ぼすのかについて検討していく手掛かりを得た。これにより、当初の計画だけでは達成できなかった腸管免疫組織の機能的意義を明らかにするための検討に進む事が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、T_<TH>細胞が胚中心B細胞の維持に必要であるかどうかを検討する事を一つの目標としていた。しかし、その後この分野における研究の進展により、この疑問についてはかなりの程度までの詳細が明らかになってきた。本年度の当研究で得られた、腸管免疫組織における反応がどのように全身免疫組織に影響を及ぼすのか、という観点は新規なものであり、腸管免疫反応の重要性を明らかにする事が期待される。そこで、腸管免疫組織において活性化されたB細胞がT細胞との反応を介してどのような特殊性を発揮するのか、という点により重点をおいて今後の研究を推進していく予定としている。
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