目的:移動手段(モビリティ)の確保が高齢者に運転免許の返納や運転中止を促すかどうか、運転しなくなったあとの生活や健康の維持に寄与するかどうかを、ベースライン調査と追跡調査からなる前向きコホート研究で検証する。本年度はベースライン調査を実施した。 方法:運転免許の更新を6ヶ月前に控えた某県在住75歳以上の運転免許保有者に自記式調査票を郵送し、2385人より回答を得た。調査票のおもな項目は、外出頻度とその目的・おもな交通手段、自動車の運転頻度・運転能力、運転免許の更新予定、自動車の代替運転者の有無、自動車以外の移動能力・代替交通手段の有無である。データ収集は継続中のため、暫定的な記述統計量を算出し、対象者のモビリティの実態を把握した。 結果:回答者のうち、男性は84%、配偶者を有する人は79%、週2~3日以上外出する人は89%、自動車を毎日運転する人は40%、週2~3日以上運転する人は84%に上った。一方、3%は安全運転にまったく自信がなく、12%は家族などから運転をやめたほうがよいといわれていた。自分の代わりに運転してくれる人が身近にいる人は72%、そのうち週2~3日以上運転してもらえそうな人は45%、また自宅からバス停まで歩行可能な人は86%に上った。しかし、93%は運転免許を更新する予定で、そのうち89%は更新後も週2~3日以上自ら運転する見込みであった。なお、主観的健康度がよくない人・あまりよくない人は17%、過去1年間に入院した人は16%に及んだ。 考察:対象地域の高齢運転者は日常的に自動車を運転しており、代替交通手段があっても運転免許を更新し、運転し続ける人が大多数であった。
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