目的:移動手段(モビリティ)の確保が高齢者に運転免許の返納や運転中止を促すかどうか、運転しなくなったあとの生活や健康の維持に寄与するかどうかを、ベースライン調査と追跡調査からなる前向きコホート研究で検証する。本年度はベースライン調査のデータ入力を継続し、現在データ・クリーニングの最中であるが、研究対象者にデータ解析の一例を紹介するため、安全運転への自信と運転免許の更新の関連を身近に運転してくれる人がいる場合といない場合で暫定的に検討した。 方法:研究対象者は、ベースライン調査時に運転免許の更新を6ヶ月前に控えた某県在住70歳以上の運転免許保有者である。データは自記式調査票を用いて郵送で回答を得た。 結果:回答者4841人のうち、安全運転にまったく自信がない人の割合は3%、少しある人は29%、かなりある人は54%、非常にある人は14%であった。安全運転に少しでも自信がある人は、身近に運転してくれる人がいてもいなくても、9割以上が運転免許を更新すると回答していた。一方、安全運転にまったく自信がない人で運転免許を更新すると回答した人の割合は、身近に運転してくれる人がいる人で44%だったが、身近に運転してくれる人がいない人では74%に上った。 考察:安全運転にまったく自信がない人において、身近に運転してくれる人がいる場合と比べ、いない場合で、運転免許を更新する人の割合が高かったということは、たとえ安全運転に自信がなく、運転をやめたいと思ったとしても、身近に運転してくれる人がいなければ(あるいは代替交通手段がなければ)、運転を続けざるを得ないということかもしれない。
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