目的:高齢運転者の免許更新に代替交通手段の有無が影響するかどうか、また運転中止がその後の生活や健康に影響するかどうかを検証するコホート研究を実施した。 方法:対象者は某県在住70歳以上の運転免許保有者で、2011年2月~4月に運転免許の更新を控えた7827人を対象にした。ベースライン調査は2010年11月、追跡調査は2012年12月に実施し、3188人より自記式質問紙で回答を得た。 結果:回答者の76%は男性、50%は75歳未満、7%は独居、7%は外出頻度が週1日以下の「閉じこもり」で、3%は安全運転にまったく自信がないと答えた。一方、自動車をほぼ毎日運転する人は45%、週2~3日以上運転する人は88%に上った。家族などから運転中止の助言を受けた人は7%、日常生活動作が困難な人は16%、1キロの歩行が困難な人は13%、過去1年間に入院した人は14%、主観的健康度がよくない人は12%であった。代替交通手段については、身近に運転してくれる人がいる人は74%、乗合タクシーが利用できる人は52%、自宅から15分以内にバス停や駅がある人は33%であった。運転免許を更新しなかった人は5%で、閉じこもりの人、過去1か月に運転しなかった人、安全運転にまったく自信がない人、家族などから運転中止の助言があった人、日常生活動作や歩行能力が低い人、健康状態が悪い人に多かった。ただし、安全運転にまったく自信がなくても、身近に運転してくれる人がいない人、自宅近くにバス停や駅がない人はそうでない人と比べて、免許を更新していた。 考察:安全運転にまったく自信がなくても代替交通手段がなければ免許を更新せざるをえないことがわかった。今後は本コホートの追跡を継続し、運転中止がその後の生活や健康に及ぼす影響とその予防策を検討し、超高齢社会に必要な交通医療福祉モデルを提案する。
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