がん医療における臨床研究において、医学的検査所見や他覚的所見にもとづき医師や専門家によって把握される「客観的指標」と、本人の意識や訴えによって表される「主観的指標」、それぞれの特性と役割を検討するため、以下の研究を実施・分析し、学会や学会誌で発表を行った。(1)がん臨床研究において、客観的指標と主観的指標が用いられる分布について、UMIN Clinical Trial Registryに登録されている臨床試験、および過去に臨床腫瘍学会とがん治療学会において発表された研究を対象とし、検討を行った。その結果、薬物療法など多くの介入を行う臨床試験では、生存率や腫瘍縮小効果などの客観的指標が用いられるのに対し、介入を要しない観察研究などでは、患者のQOLや心理社会面を測定する主観的指標が用いられ、年々主観的指標が用いられつつある傾向が示された(日本緩和医療学会、日本乳癌学会で発表)。(2)客観的指標と主観的指標の特性と役割を検討するため、特定の症状(がん医療で頻繁に認められる症状)を、医療者(客観的指標)と患者(主観的指標)が、それぞれグレーディングし、一致度を調べた。現在30名のデータを収集しており、中間解析の結果、痛みや嘔気といった、患者自身によって把握がなされるが他覚的には観察できない症状は、一致度が低い傾向が認められた。本研究の成果は、12^<th> World Congress of Psycho-oncologyで発表した。なお、これらの研究の一部を、総合病院精神医学会学会誌にて論文発表を行った。更なるデータの集積をした後、国際誌への投稿を予定としている。
|