本研究課題では、ヒトiPS細胞研究をめぐるELSI(倫理的・法的・社会的問題)は、iPS細胞研究の「内容面」と「手続き面」という2つのレベルから検討することが必要と考え、これまで<研究目的①‐iPS細胞研究の内容面に関するELSI研究>と<研究目的②‐iPS細胞研究の手続き面に関するELSI研究>という2つの研究目的を掲げて研究を行ってきた。したがって、これら2つを区別して、平成25年度の研究実績を下記に示す。 <研究目的①‐iPS細胞研究の内容面に関するELSI研究> 平成24年度までは、ヒトのiPS細胞等を動物の受精卵に入れて作成する動物性集合胚を作成し動物へ移植することの是非について検討し、日本生命倫理学会誌にて論文発表を行った。平成25年度は日本の議論を海外に発信すべく、海外の状況等も再度調査し、外国雑誌へ投稿するための論文作成を行った。また、新たにヒトiPS細胞を用いた生殖細胞の作成のELSIについて、倫理的な問題の本質はどこにあるのか、また、受精卵を作成することは是非や条件、作成された受精卵は自然生殖による受精卵とは道徳的価値において異なるかなど、ヒト胚研究の規制状況を調査しつつ、考察した。 <研究目的②‐iPS細胞研究の手続き面に関するELSI研究> 平成25年度は、iPS細胞等の投与・移植を受ける患者に用いられる資料や説明・同意文書のあり方を検討した。その際、therapeutic misconceptionが大きな問題として懸念されるため、癌研究の第1相試験への参加者が抱く当該研究参加への期待や態度等に関する文献も調査し、考察した。また、iPS細胞研究の推進にはiPS細胞バンクによるiPS細胞の分与事業も重要である。そこで、実際にiPS細胞バンクを見学し、また、その運用を担当している研究者とELSIに関連する課題について意見交換を行った。
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